唯心会の剣道日記

私たちは滋賀で活動する剣道の稽古会です。大人から子供まで共に剣を交えることで、心豊かな人間形成を目指し、日々の稽古に取り組んでいます。

花冷え

4月10日

職場の窓から見える大きな桜の木。
そのことに気が付いたのは今から5年前。
園庭に根を下ろしている彼女は。
その日も満開の桜を携え。
どこか誇らしげに園児達を見守っていました。

それから時々桜の木を見るようになりました。

新緑の季節には日差しを遮り。
汗だくの子供達にひと時の涼風を。
もの寂しげな季節の始まりには。
力を振り絞って真っ赤に燃え上がってみせ。
私たちを艶やかな気持ちにさせてくれました。
葉も散り果て。
大きな幹とか細い枝が露わになろうとも。
その微動だにしない力強さは僕たちに勇気を与えてくれました。

やがて季節は繰り返し。
幼稚園は閉園しました。
子供の声もしなくなり。
桜の木を見ることも減っていきました。

冷たい雨に降られた今日。
ふと彼女のことが気になって。
久しぶりに窓を覗きに行きました。
そこには変わらない大きな桜の木が。
一杯の花を咲かせて佇んでいました。
周りには誰もいなくなったけれど。
こうして遠くから見ている人がいることを知っているかのように。
精一杯咲いていました。

もう少し彼女の美しい姿を見ていたいから。
春の足踏みを聴きながら。
その命を精一杯咲かせて下さい。
来年は会えるか分からないけど。
その命の限り精一杯。
爛漫。